『ひゃくえむ。』は、完全に“名作”と呼び切っていい一本だと思います。

魚豊先生は、テーマ問わず──どころか、これまで漫画であまり正面から描かれてこなかった領域を作品にしてくるタイプですが、今作も例外なくすべてが神がかり的に面白い。

100メートルという種目を軸にしつつ、才能・努力・執着・コンプレックス…といった感情を、熱量MAXの筆致でえぐり出してくるので、読んでいて体感的に“息が切れる”ような感覚すらある。勢いも熱も凄まじく、読後にはしっかり燃え尽きたような感覚が残るタイプの作品です。

「どんな作品が好きか」とか、「スポーツ漫画が好きかどうか」とか、そういう前提を全部吹き飛ばしてくる力があるので、ジャンル関係なく“全員が一度は読んでおくべき作品”と言ってしまっていいと思います。