『生まれる価値のなかった自分がアンナのためにできるいくつかのこと』は、正直「本当にヤバすぎる」としか言いようがない作品です。

ここまで“終わっている”主人公は他に見たことがないレベルで、史上最悪と言い切ってもいいくらいのクズっぷり。でも、そのどうしようもなさが物語をとんでもない方向に転がしていくエンジンになっていて、一度読み始めると目をそらしづらい吸引力があります。

性的な描写の激しさばかりが話題になりがちですが、本質的にはサスペンスとして純粋にかなりよくできていて、展開の引っ張り方・伏線の張り方・緊張感の維持など、ジャンル作品としての完成度が高い“両軸揃った”タイプの作品です。

イロモノ的に語られがちな評価は正直かなり不当で、サスペンス好きも普通に読むべき。

もちろん描写の刺激はかなり強いので耐性ゼロの人にはおすすめしづらいですが、「合法的にやばいものを見たい」タイプの人には、かなり刺さる一作です。