『愛と呪い』は、まず「これが本当に自伝なのか？」というところから現実感が壊される作品です。平凡な家庭に生まれた身からすると、正直、目を背けたくなるレベルの内容で、「こういう人生が実在している」という事実そのものが恐ろしい。

作品として世に出ている以上、読者として“物語”として楽しんでしまうところはどうしてもある。でも読めば読むほど、「それすらも少し罪悪感を抱えるべきなんじゃないか？」と考えさせられてしまう。ここがこの作品のいちばん異常なポイントだと思う。

よくある「生々しい」「リアル」という言葉ではまったく足りない。

なぜならこれはフィクションではなく、自伝だから。これまで自分がフィクションだからこそ受け入れられていた暴力や不幸を、“現実に起きたもの”として突きつけられたとき、人はどこまで耐えられるのか──そこを問われているような、とてつもなく強烈な一冊です。